戻る
発明家体験談  京都府 M.K様より提供
『片手洗い出来る食器洗い具』の開発奮戦記   この商品の紹介ページを見る

『やったぁー!』ついに特許が確定しました。先日(平成21年1月21日)特許査定が届きました。もう10年も前の出願です。(特願平10−342283号) 

当時私は、建築技術者としてのサラリーマンでした。800万人もの雇用を支えていた建設業は冬の時代となり、真面目に仕事をしているだけでは、赤字にしかならない業種になってしまい、業者を叩く事でしか生き残れない、発注者や自分の姿に嫌気がさし、何をすれば生き残れるかを模索していました。そこで会社を辞め、福祉用具や環境負荷の少ない産業の開発を始めました。しかしなかなか収入にはつながりませんでした。 私は、発明は精神のボクシングだと感じています。ハングリー精神が無いと続けられないからです。裕福な生活では、苦しい戦いに挑む気力が、続かないと思います。まあ、4回戦ボーイがやっと一勝、出来たと言う事でしょうか。いったい何回ダウンした事でしょう。


ボクシングの試合には減量がつきものです。通常、腹が減っては、戦う気力は萎えます。やる気もなくなります。しかしそれに打ち勝つものだけが勝利を手に出来ます。
ボクシングは肉体戦ですが、発明は技術文章戦です。特許は技術思想だと言われますが、私は思いそのものだと思います、自分の思いを懸命に文章にしただけです。

しかし出願書は最終的には裁判での法廷に於いても通用する書き方が必要であるらしいです。なるべく広辞苑に載っている言葉を使います。載っていない言葉は定義します。
法治権社会のルールにのっとり、自分の考えをどのように、文章と図面を使って表現するか、簡単でもあり、難しいものでもありました。

アイデアを出し、図面上で思考錯誤し、試作品を作ります。道具も無い、作業場も無い、資金もありません。無い無いづくしです。工夫だけが武器です。作品が出来上がります。使ってみます。そこで色々な問題が出てきます。又問題点を改良し、改良しても、新たな問題が浮上してきます。使いやすさは良いか、大きさは台所に邪魔にならないか、材料、製作費は適当か、これらを検討すると、アイデアを根本的に変える必要が出てきました。又一から出直しです。
そこで諦めるか、戦い続けるか、自分自身の決断です。

さらに思考改良を重ね、アイデアを変え自分の最良と思うものが出来ます。次に先願発明を調べると、同じ事を考えた人が、既に居る事も有ります。又ダウンです。ジャブに耐え続けても、強烈なパンチが襲ってきます。フットワークでかわす必要もあります。ジャブやパンチは個人発明で言うと技術的課題、作業環境の他に、資金という強烈なジャブがあります。じわじわと、そして確実に効いてきます。明日は我が身もホームレスかと言う事も感じていました。
つまり、どれだけがんばっても、どこからも給料は貰えないのです。ニーズを調べる調査費、交通費、写真、成果資料、製作に必要な材料、道具、賃金、出願に必要なパソコン。僅かな金額のインク代、切手代、封筒代等も、金欠病が進むと大きく感じてくるのです、簡単に言えば経費の全てが自分持ちです。この点、不況時の中小企業経営者は立派だと思います。不況時に雇用を支える事は至難の辛さでしょう。

考えが固まると特許出願を行います。費用が無いので自分自身で出願します。そして今回、初めて審査請求をしました。二年半経って来たのは、拒絶理由通知です。『この出願にかかる発明は特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。』つまり同じ考え方は既にあったという訳です。又ダウンです。
そこで拒絶理由の中身を精査します。
すると私の考えと少し違うことが分かりました。手続き補正の開始です。初めて書く手続き補正書、どんな様式でどんな風に書けばよいのかまったく分かりません。何せ見本が無いのです。発明協会を尋ね、弁理士の無料発明相談や、発明アドバイザーに教えを乞い、やっと手続き補正書が提出できました。すると今度は中間指令『手続補正指令書』が来ました。○年○月○日付け提出の手続補正書にかかる手続きは下記事項について法令に定める要件を満たしていないのでこの手続き補正指令書の発送の日から30日以内に下記事項を補正した手続補正書を提出してください』と。


関門は次々と出てきます。上申書を出しました。次に来たのは再提通知です。つまり早く手続続補正書を出しなさいという事です。実態審査の前に方式審査に引っかかって実態審査にたどり着けないのです。そこで審査官に電話をかけ補正の仕方を聞きます。法律用語は慣れない者には、とても難しい事ばかりでした。
26歳の時、資格試験の為、建築基準法関連法規を勉強した事があります。約500ページある面白くない法規集を3回読みました。その時思ったのは何故こんな分かり難い書き方しか出来ないのか疑問でした。表や絵にすれば一目瞭然な事をくどくどと、難しい文章にして書いてあります。当時は苦にならなかった文章を読む事だけでも、今は苦痛です。眼力が弱まったからです。しかしこんな事を言っても現実には愚痴にしかなりません。

本題に戻り、審査官は聞けば親切に教えてくれます。具体的な方法が分からない者にとっては一言一句聞く必要があります。そして手続続補正書を作りました。出願当時のデーターはフロッピーディスクにしかありませんでした。今のパソコンにはFDドライブや一太郎は付いていません。一言一句違わないように、又同じ文章を打つのはとても大変です。そこで特許電子図書館の電子公報からデーターを取り、ワードに貼り付け修正しました。そして発明協会にUSBで持ち込み、送信しました。ところが何回やってもエラーが出て、送れないのです。結局図7と書かれているような所はリンクが張ってあり、すぐに図面が見られるようになっていたのですが、見かけ上は何も無いように見えるのです。これが分かるのにも数時間かかりました。パソコンの習熟度も不慣れな者には大きな関門です。発明協会のアドバイザーと特許庁の審査官の方々には本当にお世話になりました。

昨年3月4日に拒絶理由通知が来てから、京都発明協会の階段を、何回上り下りした事でしょう。あれから約10ヶ月、遂に特許査定に至ったのです。途中、あまりのもどかしさに腹を立て、何もかもぶち投げて、止めようかともしました。しかしアドバイザーの先生の『腹を立てて気持ちは治まっても、実質的には何の成果も出ませんよ、辛抱して中身を取るか、ここで止めるか、それは貴方次第です』との言葉や、コンテストで評価してくれた審査員の先生方、またこの発明品を評価していただいた障害者の方々の力です。先人の言った言葉も大きな力になりました。ある本によるとアインシュタインはこんな言葉を残しています。『暗闇の中で模索を続け、強いあこがれを抱きつつ、自信と消耗に交互に見舞われ、ついに光の中へ突入するまでの不安な歳月、それは自分自身で経験した者でなければわからない』
又ラジウムを発見したマリーキューリーが共同発見者である、夫のピエールキューリーについて次のように記しています。『実験室における偉大な科学者の生活というものは、多くの人々が想像しているような、なまやさしい牧歌的なものではありません。それは物に対する、周囲にたいする執拗な闘争であります。発見は前もって積み重ねられた苦しい努力の結実であります。実りの多い多産的な日々の間にはさまって、何事も成功しない不安な日々が混じってきます。こういう時こそおのれの気の弱さや落胆と戦わなければ成らないのです』と。つまり最大の敵は自分自身なのです。

これらに支えられ、最後までやり遂げる事ができました。1998年、宮崎医科大学の介護医療福祉コンテストで出会った加藤源重さん(後に三河のエジソンと呼ばれる)の養生訓にも励まされました。結局『蒔かぬ種は生えぬ』『短気は損気』『成らぬ堪忍するが堪忍』です。よく考えれば私は健常者です。金が無くても、思ったことは自分の体で出来るのです。これは福祉の世界を見て、健康や五体満足がどれほど幸せなことであるかを、この目で見、この耳で聞、体験した事にも由来しています。机上の勉強では分からない事です、人間は本当の事は、やっぱり体験したものしか分からないと言う、先人の言っていた言葉通りでした。とても貴重な勉強が出来た、よい経験だったと思います。この経験は今後私の大きな戦力になると思います。お世話になった皆さん本当に有難うございました。

それでは内容の紹介をします。
今まで出来なかった事が、自分自身で出来る事は、健常者、障害者を問わず、嬉しいことです。それは生きている事の充実感にもつながります。
本作品は吸盤につながったケース(1)にスポンジ(2)を複数個差し入れ、スポンジに境目(クレバス(4))を設け、クレバス延長上のケース(1)周壁にスリット(4)を設け、食器が出し入れ出来るようにしました。
吸盤同士を紐でつなぎ紐を指で引っ掛けることで簡単に吸盤が外れるようにしました。
その事で片手しか使えない人でも、食器や、スプーン、フォーク、包丁等、多種多様の台所用品を、簡単な一つの道具で、片手で洗うことに成功した道具です。
又、ラーメンの袋や、調味料、薬の袋の開封をする場合にも、スポンジのクレバス(割れ目)に対象品を差し込んで保持させ、片手でハサミを持ち、袋を切って開封する、物品保持具にも使えます。
同じ使い方で、歯ブラシに歯磨き剤を付ける時、封筒を開封する時、書類をホチキスする時等、物品を保持さす用途にも使えます。

自分のしたい時にしたい事が出来る。介護人への都合や気兼ねも不要です。
これが自助具の長所です。使いやすい自助具の出現は使用者のやる気を促進し、生き甲斐にもつながります。生き甲斐が出れば脳内細胞の活性化が促進され回復に繋がることは医学的に根拠があるそうです。神経伝達細胞ドーパミン等は、気持ち感情で、出来る量が違うらしいのです。医療費や介護費が減ることは、財政の厳しさが増す行政に於いても、魅力的な事です。
介護用品に認定されれば障害者は1割の費用で購入できます。

加藤源重さんは、どうしても豆腐の味噌汁を自分の手で食べたいと言って、指の無い手でお箸が掴めるホルダーを作られました。発明仲間には障害者の要望に答えて道具つくりをしている仲間がいます。研究会の例会で話をしているとバナナの皮を手で剥いて食べたいと、片手が不自由な方から、道具作りを以来されている事も分かりました。包丁で3センチ程度に切れば、片手で食べられるじゃないですか、と言うと、『いや!自分の手で皮を剥いて食べないと、バナナを食べた気がしない』と言われたらしい。

人の気持ちとはそんなものかも知れません。そして健常者に於いては、牛乳、ジュース等の飲料を飲んだ後のコップ等を洗う際、片手の指先の先端を、ほんの少し濡らすだけで、簡単にコップ等を洗う事が出来、職場に於ける男性でも、即座にコップを洗ってしまえるので、お茶汲みの習慣が無くなった会社等においても、紙コップ等の使い捨て容器の使用を止める事が出来ます。
そしてスポンジの形を、象さんや熊さん、又アライグマが二匹手を合わせて抱き合っている中に食器を通すような形にすれば、子供が喜んで自分の使った食器を洗うかも知れません。

写真の例はヒマワリの花が食器を包み込んで洗うようにしましたが、各人の個性によって多種多様のものが想像できます。それが人々の生き甲斐である仕事や産業の創出につながる事を願っています。
掃除洗浄は、生活の基本です。とめどなくエネルギーを使い、使い捨て製品を開発し、使用することは母地球を再起不能にすることです。
電気も不要なこの作品で障害者はもちろん、健常者にも使ってもらってユニバーサルデザインとして雇用の創出にも繋がる事を願っています。そして世界に発信できればと思っています。
この作品は1998年の、九州、宮崎医科大学が行った介護医療福祉展で、宮崎県社会福祉協議会賞を、又2000年の日本リハビリテーション工学協会の優秀賞を受賞しており、受賞時にも多くの方々から商品の購入の問い合わせを頂きました。しかし試作品しか無く、その方々の要望にはお答えが出来ませんでした。
今回、特許が確定したので、製作メーカーさんが見つかると思います。当時お問い合わせを頂いた多くの方の、期待に答える事が出来ると思っています。
プラスチックやステンレス容器を成型出来る企業であれば、とても簡単に出来ると思います。
人生は波乱万丈です。脳梗塞の後遺症で片麻痺に成って、半身が不自由になった方や、事故や病気で片手の自由を奪われた方もたくさん居られます。宮崎医科大学での介護医療福祉展の時、片手で物づくりをし、五つ位の賞を独占している方が居られました。今では三河のエジソンと言われている加藤源重さんです。源重さんにお会いした事で元気を頂きました。源重さんのホームページで養生訓をお読みください。多くの方が共鳴でき、元気が出ると思います。
本件発明の採用企業を求めております。 この商品の紹介ページを見る